私って本当に「とりあえず」の人間なので。
「とりあえず、書いちゃおう」「とりあえず、やっちゃおう」「とりあえず、ビール」
「とりあえず」の裏側には、何の考えも根拠もありません。だから、失敗もあれば無責任さを咎められたりしたことも。
「とりあえず」した後で、悩んだり後悔することももちろん。
でも、「とりあえず」がないと、何も始まらないですからね。
『私、地味女(ジミージョ)お笑い、時々OL』‒‒大久保佳代子著あとがきより
お笑いコンビ、オアシズの大久保佳代子さんが2010年に書いた『私、地味女(ジミージョ)お笑い、時々OL』(大和出版)という本を読んで、大久保さんが好きになりました。
正直に言ってしまうと、下ネタ苦手の私は、下ネタを芸風にしている大久保さんに嫌悪感さえ抱いたことが…。
それ見て誰がトクするの!?
本気でそう思っていました。
なのに…。
図書館の書棚でやたらと目立つピンク色の背表紙を見つけ、惹き付けられるようにこの本を手に取っていたのです。
大久保佳代子流人生の楽しみ方
大久保佳代子さんと言えば、光浦靖子さんとのお笑いコンビ・オアシズとして『めちゃイケ』にレギュラー出演していましたが、最近はピンでのテレビ出演が多くなってきている印象。
すっかりお茶の間の顔的存在になりましたね。
名前 | 大久保佳代子(おおくぼ かよこ) |
生年月日 | 1971年5月12日 |
出身地 | 愛知県 |
職業 | お笑いタレント |
『私、地味女(ジミージョ)お笑い時々OL』は芸能界とOLを掛け持ちしていた当時の、大久保さんのエキセントリックな思考がたんまりと詰まった内容になっています。
人生観、恋愛観、仕事への向き合い方などがメインとなっていますが、指南書的な要素はほとんどなく、その時々に大久保さんが感じていたことを淡々と記している感じ。
リリー
これ、一般人が経験したら酷だなぁ…と思えるような体験も、さらっと本音で包み隠さず書かれており、
「人生が生きやすくなるか生きづらくなるかは、マジで考え方次第」
ということがしみじみと伝わってきます。
嫉妬心の切り抜け方
「自分は自分、人は人」なんてマイペース無関心を装いつつ、心の中では、ふつふつとジェラシーの火種がくすぶっている状態。
そうなの、何かと人と比較してしまい、自分よりよい状況の人をうらやんでしまいがちなの。
女芸人仲間との会話で翌日のスケジュールの話になったとき、大久保さんだけは芸能界の仕事が入っていませんでした。
しかし、OL仕事があると言うことができず、
「昼過ぎからちょこっと打ち合わせ」
と、見栄を張ってしまったというエピソード。
リリー
そんなときの大久保さんのジェラシーのしずめかたは、独特と言ったら独特。
ヒマしていそうな女芸人のブログにたどり着くまでネットサーフィン
自分よりも分が悪い人を見つける
↓
自分のほうが恵まれているという優越感に浸る
↓
嫉妬心がしずまる
リリー
心理学に「下方比較の法則」というものがあります。
立場的に自分よりも下の人と比較することによって、自分のほうがマシだ、恵まれているという安心感を得ること
視野が狭まって1つの問題に固執してしまうと、自分がみじめに思えてきたり、世の中のすべての不幸を背負ったような心境になってしまいますが、そんな中でも、確実に自分よりも哀しみや劣等感に苛まれている人はいるわけです。
そういう人たちを思うことで、
「自分のほうが恵まれている」
というように、視野を広めて考えることができるようになるんですね。
大久保さんのジェラシーのしずめかたはまさしくこの「下方比較」。
リリー
大久保さんは、本能的に嫉妬心をコントロールするすべを知っていたんでしょうね。
【大久保佳代子のいい言葉】
そうなんだよ。余裕がある方が勝ちなんだよ。(略)人と比較して、ふつふつしている時間に、もっと自分のために時間を使って、自信に繋がる何かをすることが大事なんだよな。
落ち込んだときの対処法
マネージャーから「明日、雑誌の取材がありますから。オアシズで」と。(略)そのとき、企画書に嫌なものを発見。
取材のお願いという箇所にオアシズではなく、光浦靖子という名前のみが記載されていたのである。(略)これはいわゆるバーターというやつで、本来は光浦さんのみに取材依頼がきていたのを、‒‒‒私も一緒にねじ込んだパターンだなと。
大久保さんは、それはそれとて「ありがたい」と思い、「オアシズでお願いしてよかったと思わせるために頑張ればいいだけのことなのだ。」と前向きに考えています。
しかし、そんな意気込みとは裏腹に、惨めな思いをしてしまいます。
- 記者が明らかに光浦さんしか見ていない
- 私が話しているのに光浦さんの挙動にばかり目を向けている
- せっかく話した内容を「わかりました」の一言で片付けられる
芸人と言うより、人としてのプライドをズタボロにされた感じね…。私だったら耐えられないわ。
こんなときのイライラ、鬱々を解消するすべが、大久保さんの場合は行きつけのバーのマスターにグチを聞いてもらうこと。
しかし、そんな日に限って店内は満席。
仕方ない…と帰り際に立ち寄った薬局で、店員のおばさんに、
「いつも楽しませてくれてありがとう。娘が大ファンなんですよ」
と声をかけられ、足取りが軽くなる大久保さん。
「人の気持ちって、こんな些細なことで変わるんだよな。」
しかし、これは大久保さんが自分の立ち位置を心得ているからこそのものでしょう。
光浦さんのほうが人気があることは事実
↓
それでも、オアシズというコンビである以上、自分も認めてもらいたい
↓
やっぱり脚光を浴びるのは光浦さんのほう
↓
惨め
↓
それでも、誰かがちゃんと見ていてくれている
↓
認めてもらえることは嬉しい
世の中のどれだけの人が「自分の立ち位置」を受け入れているでしょう。
- 私のほうがあの子より美人なのに、いつも男性から声かけられるのはあの子のほう
- 俺のほうが仕事できるのに、どうしてあいつばかり上司に可愛がられているんだ
- 私の旦那のほうがハイスペックなのに、お隣の旦那のほうが出世が早い
ベストセラーになった『置かれた場所で咲きなさい』という著書がありましたが、置かれた環境を受け入れ居心地のよい場所にするということは、相当なエネルギーを要することです。
大久保さんのように、「置かれた場所=光浦さんのバーター」という立ち位置でも、いつか花開くときのために頑張ろうとする姿勢には見習うべきところがたくさんありますが、なかなか真似できることではありません。
しかし大久保さんの、
「人の気持ちって、こんな些細なことで変わるんだよな。」
という言葉には、生きやすくなるためのヒントが隠されていますよね。
他人の言葉を素直に受け入れてみる
↓
自分では気付けなかった面が見えてくる
↓
視野が広くなる
↓
そこだけが世界の全てではないと気付ける
リリー
大久保佳代子から学ぶ「かわいい女」
大久保さんは1971年生まれの48歳(2019年現在)。
人前に出る仕事だからということもあるかと思いますが、肌がきれいで髪質もよく、とてもアラフィフには見えません。
『私、地味女(ジミージョ)お笑い、時々OL』の中では自分を「バカボンのパパ顔」と言っていますが、過去に挑戦したグラビア写真を見ると、同性でも見惚れるほどの艶と色気を爆発させています。
そんな大久保さんの恋愛事情は…
これでも20代は、ちゃんと付き合っていた彼氏がいた(2人)。30代前半は、付き合ったような気がする彼氏がいた(これも2人)。
トーク内容を聞いていると、芸人らしくウィットに富んだ話題はさることながら、周りへの気遣いもしっかりしていますよね。
ブス女芸人として売ってはいても、性格的には美人の部類に入るのではないでしょうか?
あるとき、母親から「外では、ヘラヘラ愛想ばっかふりまいて、家ではムスッとして」と指摘された。「ヘラヘラ愛想ふりまいて」という言葉がすごく恥ずかしかったのを覚えている。(略)ヘコヘコ媚びているってことだと思ったからだ。(略)万人に好かれたい、いや誰にも嫌われたくないという気質は、今でもまったく変わっていない。
一方相方の光浦さんは大久保さんとは真逆の性格で、
「気を付けて帰ってね」には「思ってないだろ」だし。
「時間が経つのって早いよね」には、「思ってないだろ」。
「もう、お腹いっぱい」にも「嘘つけ」だし。
(略)
その潔さが、少しうらやましかったりするけど、私はやっぱりなかなかできない。
裏表がないので、最終的には光浦さんのことを好きな人しか残らず、本人もそれでいいというスタンスのようです。
きっと誰もが理想とする生きかたですよね。
でも、それをできる勇気がある人はごく一部よね。
大半の人は「嫌われたくない」が無意識のうちに発動し、当たり障りのない会話に終始してしまうもの。
とはいえ、「嫌われたくない」一心で繰り出した言葉には「他人への配慮」がふんだんに詰め込まれているものです。
時々辛辣なツッコミを入れつつも、フォローすることも忘れない大久保さん。
そんな「優しさ」が不遇な時代を乗り越え、光浦さんに勝るとも劣らない人気を勝ち取るきっかけになったことは確かだし、沢山の女芸人に慕われ、ブスをウリにしていても男性にモテる秘訣なのでしょう。
リリー
かわいい女は顔ではなく中身
たとえ「バカボンのパパ顔」であっても、男性に事欠かず、仲間にも恵まれている大久保さん。
10年前よりも確実に可愛くなってきていると感じるのは私だけでしょうか?
生まれ持った容姿にコンプレックスを抱いて、成人しても「ブスだから」「デブだから」「ガリだから」とそのことばかりに固執する人がいますが、彼女を前にしてしまえば、そんなのはただの言い訳。
努力したくないだけなのか、よっぽど視野が狭くなっているのか…。
『私、地味女(ジミージョ)お笑い時々OL』には大久保さんの内心の思いがこれでもかというほど込められていて、
「あの自信に満ちあふれた大久保佳代子も人の子なんだ」
「っていうか、なにこの親近感」
という気分にさせられます。
リリー
あっという間に読めるのでぜひ手に取ってみてくださいね!