結婚したいと思っても、理想の相手ってなかなか見付かりませんよね。
妥協して選んだ結果、不満ばかりの結婚生活になるのも避けたい。
理想と現実の間で揺れ動いているこの気持ちに決着が付く日は来るのだろうか…。
考え出すと不安になってしまいますが、最終的にはどこかでどちらかを選ばなければなりません。
理想か?
現実か?
結論から言ってしまえば、本気で結婚をしたいのなら、理想を追いかけ続けるのははっきり言って時間の無駄です。
なぜなら、あなたの理想にマッチした人間など、日本中どこを探したって見付からないからです。
そろそろ現実に目を向けてみましょう。
理想の結婚相手に出会うことを夢見る女性
33歳、独身のA子さんの話をしましょう。
彼女は一度も男性とお付き合いをしたことがありません。
もともと控えめな性格ということもあり、恋愛には奥手。
身近にいる男性にときめきを感じたこともなく、いつも好きになるのはアイドルやミュージシャンといったビジュアルの整った手の届かない男性ばかり。
あまりにも男っ気のないA子さんを心配した母親が、たびたびお見合いの話を持ってきます。
しかし、彼女は写真を見る間もなくシャットアウト。
友達に誘われて婚活パーティーに行ったこともあります。
けれど、選ばれるのはいつだって明るくて美人の友達のほう。
みじめな思いをしたことがプライドを傷付け、たった一度参加したっきり、それ以降行くことはなくなりました。
業を煮やした母親が尋ねます。
「あれもこれもダメだって言うんなら、あなたはどんな男の人が現れたら結婚したいと思うの?!」
A子さんはそう訊かれて、初めて自分が結婚したいと思う男性の特徴をイメージしてみました。
【A子さんの理想の男性】
- 目鼻立ちがはっきりしたイケメン
- 身長は180㎝前後
- やせ型
- 服のセンスがいい
- 年齢は自分と同じか年下
- 年収600万
- クリエイティブな職業
- 大卒
- 優しくて包容力がある
母親は言葉を失いました。
そんな絵に描いたような男が、この世の中にいるのだろうか?
いや、万が一にもいたとして、どうしてそんなパーフェクトな男が自分を選ぶと思うのだろう。
私の娘はこの先、本当にちゃんと生きていけるのだろうか…。
母親が言葉を失うのも無理はありませんね。
ここまで世間知らずで夢見がちな娘になったのも、私たち親が過保護にしすぎたせいだ。
そう思った母親は、娘を現実に引き戻そうとしました。
【母親の説得】
- 目鼻立ちがはっきりしたイケメンはテレビの中にしかいないのよ。
- 身長180㎝前後の男性ならいくらでも知っているけど、イケメンでやせ型じゃなくても大丈夫なら今度会ってみない?
- 服のセンスがいいって、おしゃれさんってことよね。浪費癖があったら苦労するわよ。
- 同じ年齢か年下がいいですって?あなた今33歳よね?同じ年齢や年下の男性は30過ぎの女になんて興味ないわよ。
- 年収が600万だなんて、開いた口がふさがらないわ。いるわけないでしょ。いたとしてもとっくに既婚者よ。
- クリエイティブってなに?堅実な仕事じゃダメなの?クリエイティブってなに!
- ちゃんと職を持っていて優しくしてくれる男性なら、別に大卒じゃなくてもいいんじゃないの?
- 優しくて包容力があるのはいいことだけど、結婚生活をするうえでもっとも大事なのは、忍耐力よ。
- っていうか、そんな素晴らしい男性と結婚したいと思うのなら、あなたもそれ相応の女性にならないと釣り合わないのよ。家事も洗濯も人任せじゃない。
母親とは何でも言い合える仲でしたが、A子さんは自分の理想をすべて否定され、ひどく傷付きました。
そして捨て台詞を吐いて自分の部屋に閉じこもってしまったのです。
「私は加齢臭のする小太りのおじさんとなんて絶対に結婚したくないの!お母さんが持ってくるお見合い写真の男はみんな40代のおっさんじゃない!」
母親は唖然としました。
そういうあなたは、もう30過ぎてるじゃない?
あなたの理想の年下男性から言わせれば、あなただって立派なおばさんよ…。
もちろん声に出しては言えませんでした。
理想の結婚相手を探す男性
続いては40歳独身B男さん。
彼は35歳まである女性と交際していました。
その期間6年3ヶ月。
お互いに順調な関係を築いていましたが、突如女性側から別れを切り出されてしまいました。
きっかけはB男さんの転勤。
B男さんは彼女に一緒に付いてきてもらえるものとばかり思っていました。
しかし、彼女は今の仕事を気に入っていて辞めるつもりはないと言います。
思っていたのとは違う返事を聞いたB男さんは、ついムキになって2択を迫ってしまいました。
「俺と仕事、どっちを選ぶんだ?」
6年も一緒にいたので、今更遠距離恋愛なんて想像も付かないB男さん。
もちろん彼女だって遠距離なんてイヤに決まってる。
「仕事なんて新しい土地でいくらでも探せるじゃないか」
B男さんは深く考えもせずに言ってしまいました。
すると、みるみる彼女の表情が変わっていったのです。
「私は今の仕事を気に入っているの。仕事なんていくらでも探せるですって?じゃあ、どうしてあなたがそうしないの?今の私たちの関係を続けていきたいなら、あなたこそ転勤のない仕事を探せばいいじゃない!」
「なんだって?!俺のほうが君より稼ぎがいいんだぞ。その仕事を投げ出して別の仕事を探せだと?」
これが決定打でした。
「私の仕事を尊重しているようでいて、実は見下していたのね!あなたとはおしまいよ。さようなら!」
最初のうちは苛立ちに任せて、彼女が折れるまで連絡はしないと強がっていたB男さんでしたが、いくら待っても彼女から連絡がくることはありませんでした。
こちらから連絡を取ろうとしても、すでに音信不通。
こうして6年も続いた交際があっさりと終わってしまったのです。
彼女に未練タラタラのB男さん。
早く次の恋愛を始めないと…と焦っているうちにあっという間に40歳です。
周りのすすめで婚活を開始しました。
けれど、彼の理想の奥さん像には、どうしても元カノの影がちらつきます。
【B男さんの理想の女性】
- スレンダー美人
- 料理がおいしい
- 家事が得意
- 胸が大きい
- 20代~30代前半
- 優しくて男性を立てることができる
元カノと付き合っていた若かりし頃を思い出しているのでしょうか。
スレンダー美人…いいですね。
料理がおいしい…最高ですね。
家事が得意…文句なしです。
胸が大きい…小さいよりは大きいほうが夢がふくらみます。
20代~30代後半の女性…若ければ若いほど子供をたくさん産んでくれそうです。
優しくて男性を立ててくれる…生意気な女性の尻に敷かれるのはうんざりしますよね。
でも…。
仮にこんな女性がいたとして、40代のB男さんのようなおじさんを選ぶでしょうか?
芸能人にも年の差カップルはたくさんいるということを励みにしてはいけません。
若い女優やタレントと結婚できる俳優たちは、若さを保つ努力をしているし、その生きかたにも女性を惹き付ける魅力があるのです。
B男さんにそんな芸能人に勝るとも劣らない魅力があるのであれば、堂々と若くてキレイで家事料理の得意な女性を狙っていけばいいんです。
しかし、そういう女性は若い男性陣が放ってはおかないでしょう。
婚活現場に現れたとしてもあっという間にカップリングしていなくなってしまいます。
そろそろ、昔の恋は忘れて現実を見てみないといけないですね…。
理想の結婚相手と結婚するのはおすすめしない
A子さんが山のように高い理想を持って、母親の持ってくる結婚のチャンスをことごとく棒に振っているのは、おそらく、今の自分を変えるのが怖いからでしょう。
結婚をするということは、他人と新たな関係を持って新しい家庭を築いていくということです。
不安にならないわけがありません。
それなら、自分の理想に合った完璧な男性と一緒になれたほうが、幸せのほうが大きすぎて不安のことを考えずに済むということなのでしょう。
だいぶ独りよがりな話ですが、これが自分に自信を持てないA子さんのすべてなのです。
とはいえ、仮に理想の男性と結婚できたとしても、おそらくうまくはいきません。
映画やドラマのように生活臭のない新婚生活を思い描いているA子さんは、理想の男性がちょっとでも理想から外れたことをすると、幻滅して許容できなくなるでしょう。
日々の生活って、そんな生やさしいお芝居のようにはいかないんですけどね。
彼女は気付いていないのです。
これはB男さんにも言えることです。
若くて美人な妻が、10年後も20年後も同じ状態を保っているなんてことはありえません。
どこかで吹っ切れて現実を見ない限り、彼らは永遠に覚めない夢の中をさまよい続けるしかありません。
理想の結婚相手を探し続けた結果…
2年後、A子さん35歳。B男さん42歳。
2人の人生には大きな差が生まれました。
もともと引っ込み思案で夢見がちで潔癖症の気があったA子さん。
自分はすっかりおばさんと言われる年齢になっていますが、気持ちはまだ20代のまま。
学生時代の友人はみんな結婚して子供もおり、すっかり話がかみ合わなくなりました。
会話の内容がいつまでもイケメンアイドルの話ばかりなので、会社の同僚からは少々変わり者の扱いを受けています。
休日は誰からの誘いもなく、いつも母親を誘ってランチやショッピングを楽しんでいます。
最近、母親がうるさく「結婚、結婚」と言わなくなってきたことが、安心であるのと同時に不安でもあります。
A子さんは、時々両親がいなくなったときのことを考えて寂しくなることがあり、今まで母親任せだった家事や料理をやるようになりました。
まだまだお世辞にも上手とは言えませんが、これは彼女の中では新しい自分を始めるための小さな一歩なのです。
一方、B男さんのほう。
飲みの席で、「婚活を始めてもなかなかいい女性に出会えない」という話をすると、突然友人が怒り出しました。
「いい女っていうけど、いい女っていったいどういうのを言うんだよ!まさか40過ぎてんのにまだ20代のピチピチな女の子を狙ってるってんじゃないよな!?」
友人は20代の頃に結婚しており、すでに3人の子供の父親です。会うたびに「理想の女がいない」とグチるB男さんの認識の甘さに辟易していました。
「確かに若くて従順な女なら、元カノみたいにお前を捨てるなんてことはしないだろうよ。最高だよな。男のプライドも保てるしな。けれど、子供ができたら、お前みたいな甘い考えの男はすぐに愛想を尽かされるぞ。俺は子供3人育ててるから言えるけれど、子育てってものすごく大変なんだよ。なのにおまえみたいなのが『子供にばかり愛情注いで俺には見向きもしない』ってバカなこと言い出すんだよ。奥さん、睡眠もろくに取れなくてボロボロになってるのに、朝食が準備されていないって怒り出すんだよ。そして、ある日奥さんが実家に戻って帰ってこなくなるんだよ。今まで家事も育児も全部任せっきりだったから、おまえみたいなのはすぐに寂しくなって泣きつくんだよ。『俺が悪かったから頼む。帰ってきてくれ!』って。で、そこで初めて奥さんの偉大さに気付くんだな。髪もボサボサ、化粧っ気もなくボロボロにやつれていても、なんだかすごく魅力的に見えるんだよ。一生をかけて守ってやらなくちゃって思うんだよ。それが家庭を築くってことなんだ。生きるってことなんだ!…っていうか、これ全部俺の話な」
今までなら、「俺の気も知らないで!」と卑屈になっていたB男さんですが、子供3人の父親でもある友人の言葉には、グサグサと突き刺さるものがありました。
「確かに俺、考えが甘かったのかも…」
その気付きは、今まで停滞していたB男さんの思考を大きく変えました。
結婚をするということは、自分が良い思いに浸るってことじゃない。
本当に大変なとき、本当に苦しいときに協力して乗り越えていけるかどうか…だよな。
与えられることばかり考えていたら、絶対にうまくいかない…。
それからというもの、B男さんは年齢や容姿だけで女性をはじくということをしなくなりました。
その結果、会話をしていても無理がなく穏やかな気持ちでいられる36歳の塾講師の女性と見事成婚しました。
元カノとはまったく正反対の容姿の持ち主ですが、B男さんは今の彼女の笑った顔がとても気に入っています。